2018年3月10日(土)、東京都内にてFree, I doならびに tranquil lifeのWレコ発イベントが行われ、5バンドが下北沢のライブハウス「THREE」へ集まった。
また、この日は3月にしては風の冷たい一日であったにも関わらず、
身動きが取れないほどの多くのオーディエンスが会場を埋め尽くし、
国内のインディーズシーンを彩る2バンドの音源発売を祝った。
なお、当日出演予定だったオルタナティブロックバンド「The waterfalls」は
この日メンバーの急病のため、やむを得ずキャンセルとなってしまったが
素晴らしいバンドなのでぜひチェックされたい。
(私のおすすめ曲は、「Ride」。)
この1日の様子を、小林淳一のアーティスティックなフォトとともにお伝えしていく。
#1 Youthmemory
Set list
- Seems like forever
- Where
- April Kisses
- City
- Dreamin’
- NEO TOKYO
トップバッターはYouthmemory。
一曲目、ミドルテンポの「Seems like forever」は彼らの自己紹介のようだ。
彼らの演奏は「ライブ」というよりいわゆる「ショー」と言って差し支えないだろう。
テクニカルでキレのあるDr. Karakiが場をとりまとめ、全員が自由な表現をしている感覚だ。
「City」はキャッチ―なメロディで踊りだしてしまいそう。
フロントマンであるVo.Ozakiの振る舞いは力強いアピール力があるというより、控えめな笑顔を見せる。
ここで気づいたのだが、彼らの演奏はかなり「音源に忠実」なのだ。
この安定感は聴いている側にとって、素晴らしい安心である。
「彼らの想う世界観の再現性」
これが私にとってはショー感覚をもたらすのだ。
Youthmemoryはどんなステージでも、ずっと彼らのショーで音を踊らせ続けるだろう。
「6曲しか聴けないのが実に惜しい。」そんなオーディエンスのポジティブな未練を残し、2バンド目のTranquil lifeへバトンタッチした。
#2 tranquil life
Set list
- december
- distance
- (新曲)
- Yours
- flower
「tranquil life(トランキルライフ)です!よろしくお願いしまーす!」
tranquil lifeは日本語で“平穏な生活”。
クールビューティーな佇まいでありながら、
マインドはどこまでも「平穏」なフロントマンVoカツアリサがオーディエンスの視線を集める。
しかしありがちな紅一点のバンドではないことは、
ライブをよく観察すればいとも簡単にわかる話である。
なぜなら、彼女が視線を一手に引き受けるからこそ、実はその水面下でGt.イシハラ、Ba.フジワラ、Dr.ササキの3人はのびのびと「やりたいこと」を表現していると感じるからだ。
Dr.ササキは日ごろ仙台に居住し、イベントの時に上京してくるという。
今日この場に、ここに賭ける想いはいかほどだろうか。
この日は彼らの2nd casetteのレコ発であり、とにかく良い音を届けたい!という突破力にあふれていた。
彼らのリードトラックであるflowerで伸び伸びした演奏を見せると、オーディエンスからは笑顔がこぼれた。それは彼らの素晴らしい演奏と、レコード発売を祝う素直な表情だった。
#3 The echo dek
Set list
- Sister on the Family Bed(*)
- Nightvision
- Beach
- Audioslave(*)
- Thumb Sucker
- City Light
(*)MVをThe echo dek公式Twitterのフォロワーに限定公開との情報も有、マストチェック。
3ピースの「The echo dek」。
イベント前にリサーチしたところ、彼らの公式ホームページにて発信されるメッセージや、曲の歌詞は英語のものも多い。
そのため、今回出演したバンドの中でとりわけ「外向き」なのかも、という印象を持っていた。
その印象を裏切ることなく、彼らの演奏は音を突き詰めていて、世界のバンドと戦う余力があり、外向きで晴れやかである。
一曲目から徐々にテンションを上げていく演奏が気持ち良い。
多種多様な手数は「音楽芸」と言っても差し支えなさそうだ。
まるでアートを観ているようで、耳と心が忙しい。
観察していてわかったことがある…The echo dekの3人はそれぞれカリスマ性があるのだ。
それは演奏だけでなく、パフォーマンス面や力強いMCからも垣間見ることができた。
そんな彼らの演奏だからこそ、
「うわぁ…茹だってる…」
会場のオーディエンスからこんな声も挙がるほど、
生命力に満ち溢れている。
巧みに会場のテンションを上げていく彼らの演奏と対面し、
私はレポーターとしてこの場にいるのだが、
「Thumb Sucker」では冷静さを保てるラインをぎりぎりまで追い詰められた。
ステージの一番前まで駆けつけてしまいそうだ。
このような熱いステージが「City Light」で締めくくられると、
私は何とか「レポーター」の肩書に戻ることができた。
天性のバンドマン、天性の3人が集まった姿をまた見たいと思った。
次回はこっそり、オーディエンスとして。
#4 FORT + JIMANICA
さまざまなミュージシャンのリミックスを手掛けるFORTと、
数々のバンドへのサポートで活躍するDrummer:JIMANICAのコラボレーション。
これまで私が持っていた「ドラム」への認識をまるごとひっくり返されるステージだった。
JIMANICAのドラムを聴くまで、ドラムっていうものは「リズムやビートを創りだす役割」という認識を持っていた。
しかしそうではなくて、ドラムはドレミが無いだけで、本質的にはピアノと変わりない楽器。そんな当たり前のことに気付かなかった自分を恥じた。
ただ設備としての性能限界があるため、
その点を突破するためのメロディを奏でる相棒が必要ということに気づいた。
人間の期待に応える以上、相棒は機械ではありえず、最高のメロディメーカーじゃないと務まらない。だからこそFORTと一緒に演奏している、というのが明確に伝わってきたし、相棒を得た異なる才能のコラボレーションは本当にすばらしかった。
最後にtranquil lifeのVo.カツアリサがステージに登壇し一曲を披露。
そこにはtranquil lifeでオーディエンスの視線を引き受ける彼女ではなく
ただ歌う、そのために存在している一人の女性の愛らしい一面が見られた。
そんな3人の姿が、温かみのあるVJの映像で彩られた姿を見ていると
当日は肌寒い一日であるにも関わらず、下北沢THREEは「春一色」の幸福感につつまれた。
#5 Free, I do
Set list
- key
- pour water
- call my name
- end roll
- slipped my wind
- circle
- transparency(Anc)
「今日はTHREEに集っていただいたみなさん、ありがとうございます!」
Free, I doのステージはいつも感謝の言葉から始まる。
彼らのライブの定番曲である“Key”でスタートを切ると
会場を埋め尽くすオーディエンスの身体が早くも揺れはじめた。
1st EP視聴動画から個人的に楽しみにしていたPour waterの出来栄えは本当に素晴らしい。
「足音響く 人の流れにも 散々な報せにも」と憂いを帯びた歌詞は
女性Gt&Vo.HIROKOのフィルターを通すと、簡単に雑踏の中にトリップできるようだ。
更にこの曲の素晴らしいところは、テクニカルでありながら控えめで歌うようなギターソロだ。
曲間のMCでは「音源よりも良いぞ~!」の声もあったが
これは多くのオーディエンスに愛されるチャーミングさゆえだ。
ここで私は一つ言いたいことがある。
これまで、Free, I doのライブの感想や、音源の感想を述べる機会に恵まれていたにもかかわらず、Ba.KENの演奏に触れることがどうしてもできなかった。
それはなぜかというと、彼の演奏に適切な表現を見つけることが出来ず、感想を言うことができなかったのだ。
(スルーしていたわけではないのです。ごめんなさい。)
だから今日は必ず、文章を書く人間として彼の演奏に適切な言葉を見つけようと
ちょっとした挑戦の気持ちでいた。
そこで得た一つの結論は、彼の演奏はいわゆる「アンカーボルト」なのだ。
アンカーボルトとは製造用語で、構造物あるいは設備と地面を固定するためのもので、
基礎や強度にかかわる重要なポイントだ。
甘く通る声の男性Vo&Gt IKKI、クールでありながらウィスパーな女性Vo&Gt.HIROKO,
芯の通っていて激しい気質を持つDr.YOKOの個性的なメンバーの演奏を絶対的な安定感のあるものに落とし込むためには、彼のような人材でなければ絶対に務まらない。これが彼のすばらしい要素だ。
異なる個性を持った4人がレコ発イベントとして気合が滾った姿を見せ、1st EP「Passed days. And footsteps echo.」収録曲を中心に6曲を披露し、さらに「transparency」でアンコールに応えると会場のボルテージは最高潮のまま幕を下ろした。
また終演後は物販も大いに賑わっており、
私は、今日この日このひとときにただ音楽好きが集まった、最高の一日を記憶に刻み込み、
会場を後にした。
会場:下北沢THREE
フォトグラファー:小林淳一
スタジオカメラマン、ブライダルや大手企業の写真撮影等のクライアントワークをこなしながら、
感覚で撮影のできるイベントフォトグラファーとしてデビュー。
「感性を感性で撮る」をテーマ掲げ活動中。
実はクライアントワークで培われた技術をプライベートワークの感性で爆発させている。
そして、アーティストの姿をさらにアーティスティックに収める技術には目を見張るものがある。
今回のイベントは4時間という長丁場の中、
まったく集中力を切らすことなく撮影に臨んでいた。
Team Tapiocaの頼もしいメンバーの一人。
プライベートではちょっとしたオタク文化を愛する一面も。
(ライブレポーター…Tapioca Milk Records/Tapioca Music ぐーちゃん 通称:「タピオカさん」)